生きがい

年始
久々に実家に帰った。

一人欠けた実家の光景は
未だに慣れない。

募る話が沢山あったのか
母はマシンガンの如くおれに
色んな話をしてきた。
そしてその話の9割以上が
毎日の生活の辛い事だった。
おれは返す言葉が殆ど出ず
優しい言葉もかけられず
母に申し訳ない気分でいっぱいになり
黙り込んでしまった。

そして実家に帰るのが
正直辛くなっていた。

 

数年前、
家族に色々な問題が出てきて
帰省していたある夜、母が
“子供達には普通の幸せや楽しみを与えられなくて申し訳ない”と
泣きながら話をしてきた事があった。

父は会社員、母は美容師。
自分が小さい頃、両親とも帰りが遅かったのと
くたくたな姿を見ていたので
おれと妹は洗濯物をたたんだり、
雨戸を閉めたり、お風呂を沸かしたり
時には隠してあったお金を拝借し
カニクリームコロッケと唐揚げを
近所のお肉屋さんで買ってきて
空腹を自分たちで満たしたりして
二人には(特に母親には)
少しでも楽になってもらえればと思っていた。

母親は美容師で休日が火曜日だったので、
家族全員で旅行に行った思い出は一つもない。

それでもそれが普通と思って
生きていたので寂しい事も無かった。

なので母の幸せを与えられなかった
という言葉を聞いておれは、

“おれらはお母さんが一生懸命働いてくれて、
自分の時間を全て使って俺らを育ててくれて感謝してるし、
逆になんでそこまでするんだ?もう全て自分の為に時間をつかってくれよ!”と
少しだけ怒りにも似た感情で
それを言ってしまった。

 

帰ってきた言葉は
“あなた達が私の生きがいだから”と。

 

おれはまだ胸を張って
音楽で結果を残せたよ。と両親には
言えない。

おれは貴女の生きがいとして
自信を持てる毎日を過ごせて
いるのでしょうか?

ただ一つだけ。
母のあの言葉にちゃんと

恩返しが出来る生き方をしたい。
と今も思っています。