そうね、かれこれ20年前。
父の故郷の北海道の室蘭という所へ
おばあちゃんに会いに行った。
おじいちゃんは自分が産まれるまえに
北海道の雪の中で天に召されてしまったそうです。
一人暮らしのおばあちゃんには余程嬉しかったのか
とても優しくしてもらった。
毛ガニを5杯も買ってきてくれて。
幼稚園児にはちょっと大量すぎるよ。おばあちゃん。
1週間程滞在し帰る朝、セイイチ少年は
トイレから出てこなかった。
泣いていたのだ。
自分が悲しいのではなく、
父のおばあちゃんに向ける悲しい視線と、
おばあちゃんの父に向ける悲しい視線に。
泣きじゃくるセイイチ少年を抱えて
“また来るから”と父は一言いった。
それ以来おばあちゃんには逢えていない。